Ad astra abyssosque

てきとう。

新世代オープンワールドRPG『原神』っていうけど具体的にどこらへんが「新世代」なんすか?

 探索ちょー楽しい。

 1.6verのアップデートは久しぶりに原神の面白さを思い出させてくれた。

 RPGゲームとは基本的に用意されたシナリオを辿っていってそのストーリーを楽しんだり、アイテムとパラメータをやりくりしながら戦闘を楽しむものだった。いつからか「自由度」というものがゲームの評価項目として現れ、オープンワールド形式のゲームが現れたらしい。正直自分は全然ゲーマーではないのでそこらへんの系譜にはさほど詳しくない。

 そこに来て原神で個人的に一番面白かったのは「探索」だった。山あり谷あり川あり海あり渓谷あり奇界ありの好き勝手歩き回れる綺麗なトゥーンレンダリングの360度3Dのオープンワールドに宝箱が所狭しと用意されていて、ちょっとだけ頭を使うギミックが仕掛けてあったり、きな臭いところには必ず何かが仕込まれていたり、ゲームの中でしか見ることができないような景色がたくさん盛り込まれていた。そんなこんなでもう半年以上継続してこのゲームをプレイしている。うーん時間泥棒。

 

 ところでこのゲームは新世代オープンワールドRPGというらしい。つまり「RPG」や「オープンワールド」とは別の要素として「新世代」なのである。つまり、どういうこと? と思ったので、自分がプレイしていて新鮮味を感じた要素を振り返ってみたくなった。もっとも先に結論を言うと、何をもって「新世代」なのかはいまいちわからない。

 

・ファンタジーっぽい世界観の基底に「魔神」や「宇宙」、「深淵」という新味のある要素を忍ばせている。

 表面的な設定を軽くさらうと、原神は、まるでよくある「属性魔法」と「剣や弓の武器」を使って「魔物」と戦うファンタジーのようである。じゃあ主人公たる勇者がいて敵の魔物や親玉たる魔王がいるのかというそういうわけでは全然ない。具に見ていくとオリジナルな雰囲気を醸し出す設定が付されている。

 例えばこの世界は魔神という大きな力を持った存在たちが争い、勝ち残った七つの神たちによって形作られた仮初の均衡の上に成り立っている。神とは言いつつも、元は大きな力を持った七体の化け物たちである。つまりこの世界は一種の蠱毒である。それでいて七つの神の上にはその七神システムを管理する天理の調停者なるもの、そしてさらに何らかの上位存在がいるかのようですらある。各神それぞれが収める地域では、その地域や居住する人々についての歴史、各神の去来について、イベントや書物を通して知ることができる。

 また、ゲーム内時間が夜であれば空には星空が広がる。ゲームの中で空から星屑が落ちてくるイベントがあり、それらの星屑はこの世界の誰かの記憶の欠片のようであると示唆される。「偽りの空」や「命の星座」などの意味深なキーワードもあるが、どうやらゲームの中の星空は全て一つ一つが誰か明確な個人の生命の輝きそのものであるかのようにすら示唆される。

 こういった「魔神」や「宇宙」という、従来のファンタジーからしたら異質な世界観は、ゲーム内書籍である『ヴィーラの憂鬱』において端的に現れている。そこではもはやSFじみた、もっと言えばラブクラフト的とすら呼びうる世界観が描かれている。あまり厳密に考えるのは野暮かもしれないが、ゲーム内書籍である以上、『ヴィーラの憂鬱』を書くに至るような存在が原神世界にはいるはずなのだ。あの本の書き手はモンドやリーユエの文化からはみ出している。確かスチームパンクがモチーフの国もあるはずなので、そういうハイブリッドな文化においてなら書き手の存在を想像できなくもない。しかし現状までのゲーム内世界からしたらああいう内容の本が存在することは異常である。

 

・主人公が異質

 いわゆるRPGであれば主人公は魔王を倒す勇者であったり一番強い動機をもってゲーム内の問題を解決しようとする行動者であることが多かったのではないか。

 しかしこのゲームの主人公はそうではない。彼(または彼女)はたまたまこの世界を訪れ、天理の調停者によって双子の片割れを奪われ、それを探すために世界を旅している(ということになっている)。あくまでこの世界そのものに対しては傍観者の立場だ(ということになっている)。天理の調停者は七神のうちの誰かなのではないか、妹(または兄)はどこにいるのか、という体でお話ははじまる。しかし話が進むと、主人公はプレイヤーに開示されていなかった自分の過去の情報を突然開示する。それは物語の根幹に食い込むフェイタルな情報、かつ主人公の立場すら危うくするものだった。つまり信頼できない語り手である。また、人間の寿命を遥かに超えて生きているかのような存在であることや、そもそもは七神に匹敵するような力の持ち主であること、どこから来たのかよくわからない(明かさない)こと、探している双子の片割れは七神に敵対しているかのようであること、片割れ探しの旅はかつて片割れによって行われたことの繰り返しであるかのようにすら示唆される。

 ひょっとしたら全ての情報が出揃った暁には、一番強い動機をもって問題を解決しようとする存在になるのかもしれない。しかし今はまだ謎が多すぎる。

 

・こうした設定などを使って醸し出す意味深さ

 とにかく原神には「意味深な感じ」が濃い。ぶっちゃけ設定については確かなことはほぼ何もわからない。七神どころか主人公の真意すらはっきりしないところがある。それでいて、散りばめられた設定が描き出す世界の真実は、割とエグいのではないか、と思わされる。あるいはそういう方向にミスリーディングされているかのよう。ようつべに上がっている各国ストーリ紹介ムービーやら何やらとにかく意味深すぎる。

 

 

 自分が新味を感じたのは以上の点である。

 こうしたところからこのゲームにおける「新世代的」なものを導くとすれば、「この世は蠱毒」、「よくわからんヤバい奴に支配されている?」、「結構エグい」、「どいつもこいつも何考えてんのかわかんねぇ」、「謎だらけでマジ暗黒大陸」といった点だろうか。うーん、現代的。

 まぁぶっちゃけ単にスマホで綺麗なグラのオープンワールドRPGができるだけでめっちゃ新世代なんだけどね。