Ad astra abyssosque

てきとう。

【原神】1.1までのプレイ体験、雑感

 原神のプレイ体験が興味深かった。
 コンテンツを一つの動線に収束させていくのが普通だと思ってたのだけど、現状はそうでもない。主動線は一つなのかもしれないが、細かい動線がいくつもあって、ものによってはそこに至る線が明確には引かれておらず、プレイヤーが積極的に没入しないと踏むことのできない線すらある。
 そしてむしろ主動線以外のところのプレイ体験に原神のいいところが詰まっているように感じられた。


 原神の一つめのプレイ体験はクエストをこなしていくことだ。メニューにクエストボードが存在し、フィールド画面にもクエストの発生箇所への距離が示され、マップ上にも図示される。プレイヤーはあまり考えずとも次に何をしたらいいかがわかりそれを辿る。
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 メインストーリーはクエストの連続によって語られる。主人公の目的を踏まえつつ、このゲーム世界(テイバット)で起こっていることに巻き込まれていく。当面の目標のために誰かと協力したり、敵と戦ったり、物を集めたり、どこかへ向かうことになる。
 フィールドの敵やボスを倒しても経験値はあまりもらえない。キャラクターの強化はクエストなどをこなしてもらえるアイテムによって行われる。
 ストーリーやレベリングをクエストに依存させている点では買い切り型のRPGよりもMMOに近い。

 二つめのプレイ体験もMMOライクであり、それは装備品やアイテムの収集だ。
 キャラクターをある程度以上強化するためには敵を倒したりフィールド上で探したりしてアイテムを集めなければならない。
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 アイテムのある場所はアイテムの説明欄に示されている。
 あるいはダンジョンに挑むことでより強い装備品を集めることができる。
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 装備品には様々なオプション効果があり、どんな効果が付くかは運が絡むため、より強い装備を揃えるためには何度もチャレンジする必要がある(だがその装備が必ず必要かというとそうではなくほぼ自己満の世界だが)。
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 こうしたプレイ体験は課金へ繋がるようにも動線が引かれている。
 ストーリーで出てきた個性的なキャラはお試しプレイができ、そのキャラをいつも使いたければガチャによって得られる。より強い武器もガチャによって得られる。同じキャラや武器を何回も引き当てることでキャラクターはさらに強化される。ガチャの福引券は普通にプレイしていても得られるが、試行回数を増やすには課金が必要となる。ダンジョンの試行回数を増やすにも課金するのが早い。
 現代のネット社会ではプレイヤーたちがネットを通じてお互いに自分のキャラや装備を見せ合いっこしており、運営が広告を過度に撃たなくても勝手に煩悩を煽りあってお金を使ってしまう仕組みも存在している。ようつべでは五十万円課金してガチャを引く動画などが溢れている。



 だがクエストやキャラクターの強化からは課金とも違うもう一つのプレイ体験へと動線が引かれている。
 言うなれば、それは探索だ。
 というのも、キャラクターや武器を強化するアイテムの中には、ただクエストを辿っていくだけでは手に入れたことのないもの、見たことのないものがかなり含まれている。プレイヤーは能動的にそれらを探すことになる(アイテムの説明欄、マップ、あるいはネットの情報を駆使することになる)。
 ダンジョンにいたっては最初の数個こそストーリーの中で導入されるが、ほとんどのダンジョンはクエストによる動線が引かれていない。そこでしか手に入らない強い装備の存在は、極論、知らなければ知らないままプレイし続けることができる。正直、無くたってクエストのプレイに支障はないのだ。
 また同様にクエストとは無関係なものとして、見聞と紀行という到達度評価システムが用意されている。
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 地域の特産物集め、ダンジョンやフィールドボスのクリア回数、武器やキャラクターの強化度によって報酬がもらえる。プレイヤーはこれらのために探索をすることになる。
 そしてさらに、クエストの補助なくフィールドを歩きはじめると色々なものがあることに気がつく。というかそもそもクエストに沿っていても、なんだか道中にいろんな余分なものがあることに否応なく気付かされる。これらがさらにもっとプレイ体験を積み重ねる。
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 例えば、道中に宝箱があった、なんか遺跡っぽいところがあるから寄り道したらギミックが仕込まれていて解除したら宝箱が出てきた、つーか遺跡っぽいのってよく考えたらそこらじゅうにある、よく見たらギミックだらけじゃん、宝箱を200個集めたらアチーブメント達成したけど、さらにもう200個集めろとか書いてあんだけど、みたいな。
 探索から話が少しズレるかもしれないが、フィールドボスも初見では倒しても回復してきて首を傾げさせられたり、見た目や特性の違う敵も出てくる。戦闘システムも単なる属性相性以上に色々できることに気付かされる。
 特に指定なく、こちらからキャラに話しかけたり場所に向かって初めて起動するサブクエストもあり、かつそのサブクエストでしか使われない地域や特別感のある場所もある。
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 だがそもそもこのゲーム世界はオープンワールドであり、最初から、行こうと思えばどこにでも行ける。クエストを踏まずとも、キャラが弱くても、上手くやれば世界の端まで探索できる。
 そしてこうした主動線から外れた細部の探索が割と薄味ではなく、それぞれポジティブなプレイ体験を積み重ねてくれる。もちろんメインクエストのシナリオもおもしろい。でもサブクエストや、なんならクエストの関係ないだらだら探索すらおもしろかった。これって結構、いい意味で凄いことな気がする。


 かつてFF14を少しだけやったことがあるけれど、メインのシナリオクエストを辿るのがだるくてずっと釣りをやっていたことがある。キャラのレベルは低いから敵を避けたりやり過ごしたりしながら色んなところに行って釣りをしていた。ただ釣りだけをしていた。でも釣りをして何が得られるかっていうと魚を得られるだけで、魚はゲームの中でそれほど大事なものでもなくて、プレイにもそんなに広がりがなくて、しばらくして飽きた。なぜかそのときのことを思い出した。


 クエスト、アイテム収集、探索のプレイ体験について述べてきたが、原神にはもう一つとても奇妙で目立たないプレイ体験がある。
 というかプレイ体験とすら言えない。大多数のプレイヤーはちょっと目にするだけであまり深入りしないだろう。実際自分も大して深入りしていない。
 それはモチーフ、本、フレーバーテキストに現れる何かだ。意味深な感じと言ってもいい。
 一例として。モチーフとは何か? 例えばそれは遺跡だ。フィールドを歩けばそこら中に崩れた遺跡の残骸がある。あるいは敵キャラだ。彼らは野蛮人の見た目をしている。聞き慣れない言葉を喋り見つけ次第襲ってくる。しかし彼らと交流しようとする人々もいる。フレーバーテキストを見ると彼らの種族名はかつて滅んだ文明人の国名と似ており、かつ、野蛮人たちは自分たちの今の顔を見たくないから仮面をしていると書かれている。主人公が出会う友好的な神はみな悪魔の名前をしている。主人公はこの世界の外から来たことが示唆されている。本には五百年前や二千年前のことが書かれていて、暴君と伝えられるかつての神が決して額面通りの暴君ではなかったことが記されている。主人公の最高の親友は、主人公から妹を奪った天理の神の姿にどこか似ている。空は偽りで構成されているかのようで、地上の文明はまるである程度以上に発達しないよう抑止されているかのようですらある。プレイアブルキャラクターの強化を進めて解放されるテキストには彼ら彼女らの複雑な背景が書かれている。星か深淵を目指せという冒険者協会は世界中にあるが、同じように世界の裏で暗躍する組織と同じ国に本拠地を持ち、その国の愛の神はもう人を愛さずただ天理を倒すことだけ考えているそう。
 こうしたことは全て単なるゲームの中身、他愛もない児戯か何かに等しいのかもしれないが、きちんと構成されていればいるほど原神の色調を強め、整えてくれる。
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 さて、みほよも会社であるからお金を稼ぐことは大切で、探索やフレーバーテキストそのものはお金を稼ぐことに繋がらないから、今後そっちの路線がどうなっていくのかは知れない。
 でも原神を他と区別するプレイフィールは確実に細部の方にあると思う。クエストを辿ることや装備の厳選そのものが原神の本体ではない。
 と、思った。